作品が完成した後、値付けに迷ってしまったことはありませんか?こちらでは、簡単なステップでできる「ちょうど良い販売価格の決め方」をご紹介します。
販売価格とは?基本用語と計算方法
販売価格とは、お客様に購入していただく価格のことです。この中に、原価や手数料、利益を含ませる必要があります。
自分でつくったオリジナル作品の適正価格を考えるためには、土台の知識が必要です。見栄えや大きさでなんとなく決めてしまうと、気づかないうちに売上がマイナスになってしまっていたりして、作家活動を続けていくのが難しくなってしまったりします。ハンドメイド作品を販売するうえで、自分の作品の適正価格を見極めることは、とても大切です。
このページで販売価格の考え方を身につけて、自分の作品の適正価格を計算してみましょう。
minneにおける販売価格の基本的な計算式は、次の通りです。
原価+minneの販売手数料+利益=販売価格
原価とは
原価とは、以下の項目を合計したものです。自分の作品の原価を調べてみましょう。
- 材料費
- 材料を買うのにかかった交通費
- 作品をつくるのに使った電気代、道具代
- 試作の費用
- パッケージ代
- アトリエの家賃、水道光熱費
- 自分の人件費
これをできあがった作品の「個数」で割ると、1個あたりの原価が計算できます。
ポイントは、原価=材料費ではないということです。作品づくりには、そのほかにもたくさんの費用がかかっています。
なかでも忘れがちなのは、作品づくりにかかった自分の人件費です。価値のある作品を制作しているのですから、ご自身がどれくらいの時給に相当するのかをしっかり考えてみてください。
人件費については迷われる場合は、1個あたりの制作時間を計って、時給をかけあわせてみるとよいでしょう。大まかな数字でいいので、自分の作品の原価を知っておきましょう。
原価率とは
原価率とは、販売価格に対する原価の割合のことです。「原価 ÷ 販売価格 × 100」で計算できます。
一般的に、原価率は30~40%が目安とされていますので、こちらも念頭に置いておきましょう。
利益とは
利益とは、販売価格から原価や手数料を差し引いて得られる売上のことです。よく間違いがちなのが「利益=人件費」という考え方です。上で説明したように、人件費は原価にあたります。では、何のために利益は必要なのでしょうか。利益は、今後の活動を続けていくための資金と考えましょう。利益を得ることで、たとえば工業用ミシンの購入やアトリエの開設、広告の出稿といったように、次につなげることができます。販売価格を決める際は、自分が活動していくためにどのくらいの利益が必要かもしっかり考えましょう。
販売価格の決め方
たとえば、原価が1,500円の作品を4,500円で販売する場合、2022年3月時点のminneの販売手数料は販売価格の10.56%(税込)で475円、利益は2,525円となります。
※最新の販売手数料については、こちらをご確認ください。
4,500円(販売価格)- 1,500円(原価)- 475円(販売手数料)=2,525円(利益)
原価を計算しよう
作家活動をしているminneスタッフが、実際に販売している作品の原価を計算してみました。
値付けに迷い、なんとなくで決めた「500円」で販売しているsziaoreoさんのこちらの作品。
この作品の原価がいくらなのか計算をしてみましょう。
材料費(カッコ内は、10個つくるのに必要な分のうち、1個あたりの金額)
- 紙やすり 260円(1個あたり:7円)
- 石粉ねんど 108円(1個あたり:10円)
- つや消しニス 756円(1個あたり:7円)
- 接着剤 300円(1個あたり:15円)
- マグネット 108円(1個あたり:4円)
- マスキングテープ 150円(1個あたり:1円)
- 筆 700円(1個あたり:70円)
- アクリルガッシュ 230円(1個あたり:10円)
- 封筒 300円(1個あたり:3円)
- 梱包材 500円(1個あたり:3円)
- 透明袋 108円(1個あたり:1円)
- 色画用紙 250円(1個あたり:1円)
+ - 材料を買いに行ったときの交通費 500円
- 人件費 8,000円(1時間1,000円で計算・8時間分)
実際に原価を計算してみたところ、1個あたりの原価は973円で、大幅な赤字が発覚しました。原因は、「人件費を考慮していなかったこと」です。ここを考えていないと、自分で自分をタダ働きさせてしまうことになります。作家活動を長く続けていく上で、人件費を考えることは必須だということがわかります。
市場調査をしよう
作品の適正価格を計算したあとは、自分の作品が世の中ではどのくらいの値段で売られているのが適正かを想像するために、実際にお店をまわって調べて、値付けの参考にしましょう。値段をつけるとき、市場調査はとても大事ですが、探し方にもポイントがありますので、参考にしてみてください。
1. 大量生産品と比べるのはNG
安い商品を見て、むやみに価格を下げてしまうのは、大変もったいないです。作品のオリジナリティや制作時間、人件費などが同等と思われるものと比べないと、適正価格は見極められません。そのため、大量生産品ではなく、自分の作品が同等だと思える商品と比較しましょう。
2. ターゲットのお客様がよく行きそうな場所や店舗を探そう
自分の作品を買ってもらいたいお客様は、大型ショッピングモールならどのフロア、渋谷ならどのテナントに行くか、ネット販売ならこのサイトを見るか、といったように、具体的な場所を挙げて、そこの価格帯を参考にしましょう。自分の作品が売られていてほしい場所で価格を調べることが重要です。
このように、1個あたりの原価から販売価格を計算する方法を基本として、市場価格とも比較し、ちょうどいい価格を見極めながら、自分が納得できる販売価格を考えてみてください。
販売価格を決めたあとは、その価格で購入してもらうために、魅力的な写真は撮れたか?説明文はわかりやすいか?お届けするパッケージはこだわってるか?など、作品をより魅力的にみせて、価格の説得力を上げる方法も合わせて考えましょう。
他の方に相談しよう
決めた販売価格が購入してくれる人にとって高いのか安いのかは、自分だけでは判断が難しいと思います。そんなときは、誰かに相談して、自分の作品の値付けをどう思うか意見をもらい、販売価格の調整をしてみましょう。
相談する相手は、基本的に「自分の作品やブランドに興味のある人」や「同じ立場の作家仲間」がおすすめです。興味のない相手に相談すると、あまり考えずに「高い!」と思われ、がっくりきてしまいがちです。
また、「自分だったらこの値段で買うか」という客観的な視点で判断するのも良いでしょう。
価格設定には、思い切った決断が必要です。最後は自分の作品のブランドイメージを第一に考えて、決定しましょう。
値付けのヒント
これまでminneに多く寄せられた値付けの相談について、内容をまとめましたので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
◆無理に値段を上げなくてもOK
「自宅や工房の家賃が発生しない環境で制作している」「本業の関係で無料で手に入る素材がある」といった、自分の制作環境ならではの安くできる理由があるのであれば、それらを活かした価格設定は大きな強みになります。
◆途中で値段を変更してもよいか
これは、もちろんOKです。「これまで買ってくれたお客様に悪いと思ってしまう」という声もよく聞きますが、長く作家活動を続けるためには必要な場合もあります。どうしても気になる場合は、作品画像を一新するなどして、大きな変化を出し、価格を変える説得力を押し出してみるのも良いでしょう。
◆リピーターを獲得しよう
ネット販売の場合、大きく分けて「あなたのお店で買いたい人」と「気に入ればどこでもいい人」の2通りのお客様がいます。よりたくさんの人に作品を届けるためには、「あなたのお店で買いたい人」を増やすことが大切です。どうしたら自分のお店を選んでもらえるか、自身の作品の強みを整理したうえで、販売価格もそうですが、作品写真の撮り方や説明文の書き方など、いろいろと工夫してみましょう。
◆作品のカテゴリーを変えるとうまくいくこともある
たとえば、「マグネット」を「ブローチ」に変えたり、価格帯の高い「インテリア」に作品をつくり直したところ、どんどん売れるようになったという例もあります。また、販売価格は変えずに、作品のカテゴリーを見直すことでうまくいく可能性もあります。自身の作品は本当に今のカテゴリーが適正か、を今一度考えてみるのも良いでしょう。
適正な販売価格で健全な作家活動を
利益の出ない販売価格にしてしまうと、お客様にとっては一時的に喜ばれる面もあるかもしれませんが、作家活動を続けていくのが苦しくなり、何のために制作を続けているのかわからなくなってしまいます。ハンドメイド作家・ブランドの最大の武器は「他にはないオリジナルの作品を生み出していること」です。その自信をしっかり持って、適正な販売価格を設定しましょう。
販売価格が決まったら、minneでぜひ販売してみてください。
価格の設定についてもっと詳しく知りたい方は、minneの作家活動アドバイザーによる書籍「minneが教える売れるきほん帖」もぜひ参考にしてみてください。
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質問20「これが基本!ハンドメイド作品の価格設定を解説します」
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