こちらでは、すでに販売活動を開始している方で、今の価格設定に不安があったり、この先もう少し売上を伸ばしたいとお考えの方向けに、価格の見直し方についてご紹介します。
ちなみに、「楽しく作家活動できているので、価格改定は考えていない」という方は、自分が楽しむことが一番ですので、このままご自身のペースで続けていきましょう。周りの方の意見に振り回される必要はありません。
「安いか高いか」では解決しない、価格設定の悩み
価格設定の悩みの先には、必ず売上の悩みがセットでついてきます。ただ単に値段を上げるか下げるかを決めるのではなく、今の価格設定と売上金額のどこに課題があるのかを探っていきましょう。
一例を挙げて、考え方の手順を追っていきます。
相談例:月の売上は50,000円を目指したい
<相談者>
・作家活動を始めて約1年
・最初は1点の制作に2時間以上かかっていたが、だんだん上達して今は1点1時間ほどで完成できる
これ以上、制作時間を大幅に短縮することはできそうにない
・製作可能な数は月に15点ほど
・価格は1点1,500円で販売。月に10点ほど売れている
現在の売上:1,500円×10点=15,000円
まずは、単純に月に販売する個数を増やした場合を考えてみます。
- 「20個」販売:1,500円×20点=売上 30,000円
- 「30個」販売:1,500円×30点=売上 45,000円
- 「50個」販売:1,500円×50点=売上 75,000円
「販売する」ということは、「制作」しなければなりません。そのことを念頭に置いて、まずは売上金額と販売個数のバランスが自分の理想に近いところを試算の中から探ってみましょう。
ポイントは、一般論で決めず、自分の思い描くライフスタイルと照らし合わせることです。今回は「月の売上は50,000円を目指したい」という点がキーワードになります。
「今の自分には月に30点制作するのが限界かも…」という場合は、つくった作品がすべて売り切れたとしても売上は45,000円となり、今の価格帯のままでは目標を達成できない、という点が見えてきます。
【課題1】自分の生産能力を知る
まずは、自分の制作個数の限界を知ることが、はじめの一歩です。検討がつかない場合は、「制作時間を月にどれだけ確保できるか」から算出してみましょう。
たとえば「1日2時間・週4日を制作にあてられる」という場合、1ヶ月(4週間)の制作可能時間は「2時間×週4日×4週=月32時間」となります。
そこから作品を1点つくるのに必要な時間を割ると、月に制作できる個数の限界がわかります。
次に、目標を達成するためには何をいくつ売るペースが良いかの理想を探していきます。
ここでは、50,000円という目標を分解して、「いくらの作品を何点売るか」という課題を掘り下げていきます。おおよその売上が50,000円になるように、販売作品の単価をいくつか例示して、50,000円になるにはいくつ制作する必要があるかを試算してみましょう。自分自身では「この価格は高すぎるかも」と思う単価も含めて、いったん出してみるのが重要です。
販売価格ごとの売上目標到達個数
- 1,500円 × 34点 =売上 51,000円
- 2,000円 × 25点 =売上 50,000円
- 2,500円 × 20点 =売上 50,000円
- 3,000円 × 17点 =売上 51,000円
- 3,500円 × 15点 =売上 52,500円
- 4,000円 × 13点 =売上 52,000円
- 5,000円 × 10点 =売上 50,000円
今の価格のまま目標を達成するには、月に「34個」販売する必要があり、今の制作ペースのままで目標を達成するには、単価を「3,500円」に改定する必要があります。
これらが極端な数字だと感じるのであれば、自分にとってちょうどよい価格帯と制作数はどこかを考えてみましょう。
【課題2】販売価格を見直す
次に、作品の原価と販売価格を見直してみましょう。例で出している相談者は、ブローチを1点1,500円で販売しているとします。制作にかかる費用は次のとおりです。
・ブローチの材料費・梱包費=500円
・人件費=1,000円(時給1,000円として制作1時間)
・原価計 1,500円
現在の販売価格1,500円では、原価で販売していることになり、利益は0円になってしまいました。一般的な販売価格は「原価の3~4倍」と言われていますので、適正な販売価格は4,500円以上となります。
ここで、ほとんどの方はご自身の価格とのギャップに戸惑われます。ひとまず、セオリー通りに算出した金額を受け止めましょう。
「低価格で販売する」ということは、もちろんお客様にとっては喜ばれる面もありますが、作家活動の継続が難しくなるほどの利益率の低さでは、一体何のために制作を続けているのかわからなくなってしまいます。
ハンドメイド作家の最大の武器は「他にないオリジナルを生み出していること」です。
周りの価格帯を見て決めようとminneを検索すると、自分の作品より低価格帯もしくは同等の作家だけを見てしまいがちです。自分より高い価格で販売している作家も必ず見てみましょう。
価格の改定は、販売する人によって考え方や目標金額、経済事情も異なりますので、一般的な適正価格も参照しつつ、最終的にはご自身の判断で決めて構いません。ここでは「1,500円の作品を2,500円に価格改定する」とします。そうすると、
2,500円×20点=売上50,000円
これが基本目標になります。基本がわかると、どの程度の制作時間を確保すべきかが見えてきて、自分の活動のペースを具体的にイメージすることができます。
販売価格改定の時は告知した方がよい?
価格改定が決まったところで、次の課題は「いつ、どうやって価格変更をするか」です。minneでは、価格変更に関するルールはありませんので、いつでもご自身で自由に変更いただいて構いませんが、次のパターンを参考にしてみてください。どの方法で予告するかは、販売者の状況や運営方針により、さまざまです。
予告なしで価格改定する
販売初心者で、まだ販売実績がほとんどない場合は、特に告知せずにご自身のタイミングで価格変更して良さそうです。
予告の上で価格改定する
すでにたくさんの固定ファンの方が居る場合や、より丁寧にアナウンスをしたい場合は、事前に予告されることをおすすめします。
予告内容の例
・価格改定日(●月●日以降、価格を改定します)
・価格改定の概要(「●●シリーズは一律〇〇円アップ」といった表記)
・改定理由(材料費や作業費を見直します、といった内容)
事後報告で価格改定する
ショップの運営方針などにより、価格を変更したあとに、minneのプロフィール欄やSNSなどで価格改定に関してお知らせするケースの場合は、「よりよい制作活動ができるよう、材料費や作業費などを見直して価格改定させていただきました」といったメッセージを添えると、既存のファンの方々もご理解くださる可能性が高まるでしょう。
「ちょうどよいペースで売る」は難しい
「人気作家になりたい」「パートを辞めてハンドメイドの収益で過ごしたい」というような目標をもつ方もいると思いますが、「今の販売価格のままで、ちょうどよく、忙しすぎない程度に作品を買ってもらう」というのは、実はとても難しいことなのです。
せっかく注目が集まり、購入を希望されるお客様が増えてきても、あっという間に在庫切れになってしまい、販売機会を逃してしまったケースは、残念ながらたくさんあります。本当に欲しいと思ってくださるファンの方と巡り合いたいと願いつつも、価格を安く売り続けることは、作品の価値ではなく、価格重視で購入されるのを促進することにもつながり、人気作家になる願いや売上目標の達成を邪魔することにもなるのです。
自分の目標とペースを把握して適正な価格で販売しよう
一点でも多くの作品を、一人でも多くのファンの方にお届けできるよう、一日でも長い作家活動を続けるためには、利益が必要です。
自分で腹を決めないと、前には進みません。ぜひ納得のいく価格設定を今一度考えてみてください。
まとめ
- 価格の見直しは作品単体の価値だけで考えない。自分の目標を明確にしよう
- ひと月あたりの生産能力を把握しよう
- 自分が活動を続けるために必要な収益を得よう
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